第2 事業承継
事業承継をお考えなら、相続問題にも詳しいハイペリオン法律事務所にお任せください。
中小企業の場合、会社の引継ぎも家庭内の問題であるとして相談することができず、1人で悩んでいる経営者も少なくありません。また、事業承継の準備の必要性がよくわからず後回しにしてしまったために、円滑な事業承継ができず、意図しなかった結果になってしまうことや、後継者が見つからずそのまま廃業しなければならなくなったケースもあります。事業承継には時間がかかりますので、事業承継をお考えの方、事業承継について一度も考えたことのない60歳以上の経営者の方は、できる限りお早めにご相談されることをお勧めします。
1 事業承継とは
事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことをいいます。
2 事業承継の準備
(1)事業承継に向けた準備の必要性の理解
おそらく本ホームページをご覧の方は、少なからず事業承継の必要性を理解していると思われますが、事業承継の準備を怠ると、会社経営が不安定に陥ってしまったり、現在ある会社の事業の継続が危ぶまれたりすることがあります。まずは、事業承継がどういったものかを知り、その準備の必要性を理解し、いつでも対策ができるようにしておくことが重要です。
(2)現在の経営状況等の把握
経営者個人の資産と会社の資産が混同している場合には、何が会社財産で何が相続によって移譲する財産なのか明確にしておく必要があります。
また、経営者と会社との賃貸借関係についても明確にして対策をとっておかないと、ある時払い(会社に余裕ができてから返してもらえばいい)と考えていた会社への貸し付けが、相続によって後継者以外の相続人から突然返済を迫られる、といったことになりかねません。
しっかりと現状を把握しておくことで相続発生時に起こり得る問題点を知ることができます。
(3)後継者の決定
誰を後継者にするかによってその対策も違ってきます。
後継者には大きく分けて、「子供などの親族」、「親族以外の会社役員・従業員」、「第三者」に分けることができます。
ア 子供などの親族への承継
経営者の子供、子供の配偶者、兄弟姉妹、甥姪などの親族への承継することです。
相続等により財産や株式を後継者に移転しやすいといったメリットのほか、一般的に取引先や金融機関、社内外の理解が得やすいという特徴があります。
また、早期に後継者を決定でき、長期にわたって後継者教育等の準備が行いやすいといえます。
しかし、後継者親族が会社外にいる場合には、時間をかけて後継者の育成等を行っていく必要があり、思った以上に時間がかかります。
また、子供が1人でその子供を後継者とする場合には、そう大きな問題にはならないでしょうが、子供が数人いる、もしくは子供以外の親族に承継する場合には注意が必要です。
遺留分に配慮しない遺言書を残しておくと、後継者の方が、後で他の相続人から遺留分減殺請求をされてしまい、事業用資産や株式の分散を招きかねません。(→後述の遺言書作成の必要性参照)
後継者親族への引継ぎ後もしばらく会社に影響力を残しておきたい場合には、種類株式を活用するなどの技術も必要になってきます。
イ 親族以外の会社役員・従業員への承継
会社内にいる役員や従業員など社員に継承することです。
会社のことをよく理解しており、実務能力や経営ビジョンなどが備わっている人物を選んで指名することができます。
しかし、相続人の理解を得る必要や、後継者の資力の面で注意が必要です。相続人など親族の理解を得ていないと、事業を継がないといっていた親族が、会社を継ぎたいと言い出すことも考えられます。また、経営者の個人保証や担保の処理も考えなくてはいけません。
ウ 第三者への承継
M&A等を利用して社外の第三者に承継することです。
M&Aというとマネーゲームのような敵対的なM&Aを想像しがちですが、ここではそのようなM&Aではなく、後継者問題解決の1つとして利用されるもので、幅広く後継者を探し求めることができ、会社譲渡の対価によって利益を得ることが出来るなどといったメリットがあります。
しかし、M&Aの相手探しに時間がかかったり、会社の経営状態によってはM&A等がうまくいかなかったりすることがあります。
また、会社売却価格を有利にするために会社を磨き上げておく必要があります。
会社の磨き上げには、会社の強みを作ることと、内部統制システムを構築しておくことなどがあります。
(4)事業承継に向けた経営改善
親族承継、従業員承継、第三者承継いずれにおいても円滑な事業承継を行うためには、経営改善が必要となります。
第三者承継の場合であれば、会社の経営状態や会社の内部統制の状況などは、M&Aの相手探しや売却価格に大きく影響してきます。
(5)事業承継計画の作成(親族承継、従業員承継)
把握した経営状態などから、どのタイミングでどのような手続きを踏むか(後継者の教育をどのように行っていくのか、株式譲渡のタイミング、遺言作成の時期、定款変更)計画を立てる必要があります。
事業承継後に事業の運営を行うのは後継者ですので、事業承継計画の策定には後継者も関与させた方がよいでしょう。
(6)M&Aのマッチングに向けた流れ(第三者承継)
仲介機関の選定 → 売却条件の検討 → ※会社の磨き上げ → 売却候補先企業への打診 → 秘密保持契約の締結 → ※条件交渉 → 基本合意書の締結→ デューディリジェンス(売り手企業の精査、法務・財務等のチェック) → 売買契約書の締結 → クロージング
といった手順を踏んでいきます。
※会社の磨き上げには、会社の強みを作ること、内部統制システムを構築することなどがあります。
※経営者が一定期間、顧問などとして会社に残ることの交渉も行うことができます。
3 円滑な事業承継を行うために知っておきたいこと
(1)種類株式の活用
「いずれ事業承継をしなければならないことはわかっているが、まだ子供に会社のすべてを任せることはできない。 」 「社長の座は譲ったとしてもしばらく会社に自分の影響力を残しておきたい。」 そのような不安があり、なんとなく事業承継を避けてきた方でも、※種類株式(権利の内容が普通と異なる株式)を活用することで、議決権のコントロールが可能になります。
このほか、後継者以外の相続人には議決権をもたない株式を相続させることで、後継者相続人に会社株式を集中させたときの遺留分減殺請求による株式分散のリスクを減らすこともできます。
※種類株式として、「議決権制限種類株式(株主総会での特定の議決権が制限された株式)」、「拒否権付種類株式(特定の決議事項について、拒否権を有する株式)」などがあります。
ただし、これらの方法を用いる場合には定款変更が必要となる場合があるなど様々な注意すべき点があります。必ず弁護士にご相談ください。
(2)遺言書作成の必要性
会社経営者が、後継者である自分の子供に会社の株式や事業用資産を相続させようとした場合、遺言書を作成しておかなくては思い通りにはなりません。遺言書を作成しておかなかった場合、相続人同士の遺産分割協議によって遺産の分け方を決めることになります。
法定相続分で分割することになると、会社の株式以外の財産が多く存在していればいいですが、相続財産の価値の大半を会社の株式が占めている場合には、会社の株式が分散し会社経営が不安定となってしまいます。運よく会社の株式を1人の後継者相続人が取得できたとしても相続税の支払いやその後の資金調達難に見舞われてしまい、結局は会社の経営が不安定になりかねません。会社の株式や事業用資産が分散してしまうことを防ぎ、承継後も安定した経営を行ってもらうためにも、遺言書の作成は必要不可欠となります。
ただし、遺言書さえ作成しておけばそれでよいというものではありません。遺留分を考慮しない遺言書では、相続させなかった相続人から遺留分減殺請求をされてしまう恐れがあります。(遺留分については、こちらを参照→遺留分)
4 小括
以上のように、円滑な事業承継を行おうとした場合、専門家のアドバイスを受けて作成した遺言書のほか、事業承継に向けた事前準備が必要になってきます。
「子供に自分の会社を継がせたいが、相続による株の分散を防ぎたい。」「長男に会社を継がせたいが、他の相続人からの遺留分減殺請求に備えたい。」「後継者がいない。自分の引退後、会社を廃業しなくてはならないのか。」
こんな悩みを抱えていても、何をどうしたらいいのかわからない、何から始めたらいいのかわからない、そもそも誰に相談したらいいのかわからない、といった方が多くいらっしゃるかと思います。
後継者の育成や従業員、取引先との信頼関係の維持なども含め、円滑な事業承継を行うためには5年から10年はかかるといわれています。
そのため、早めに対策を行う必要があり、早ければ早いほど採り得る選択肢も広がってきます。
確かに事業承継はわかりにくいですし面倒なことです。ただ、そうして先延ばしにしてしまうと、いざ事業承継を進めようとしたときに、5年かけてゆっくり行うことを無理に数か月でやらなければならなかったり、取り掛かるのが遅く結局間に合わなかったりしてしまい、せっかく今まで積み上げてきた会社という資産が無駄になってしう可能性があります。
だからこそ早めに事業承継とはどういうものなのかを知り、ゆっくりと準備に取り掛かる必要があるのです。
無用な相続争いを防ぎ、円滑な事業承継を行うためにも、まずはお気軽にご相談ください。